あひるの空ヘビーローテーション+

日向武史先生の『あひるの空』が好きすぎて、ネタバレしすぎない程度に考察してます。

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「兄貴、大変だ。種まきを忘れていた」―県大会 トーナメント表を真面目に考えた結果

「兄貴、大変だ。種まきを忘れていた」―県大会 トーナメント表を真面目に考えた結果

まえがき

前回からの続きです。

blog.ahirunosora.net

今日もうざったいほどに『重力ピエロ』。

<登場人物>

  • 僕:僕です。春の兄という設定

  • 春:『重力ピエロ』の主人公の弟。ここでは僕の弟。

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種まき

「兄貴、大変だ。種まきを忘れていた」

春は本棚の上にあった四つ折りのコピー用紙を床に広げた。

何の種だというんだ。大根、法蓮草、スナップえんどう、のらぼう菜。この秋に育てたい野菜の種は畑に一通り蒔き終えたはずだ。一坪ほどしかない我が家の畑はもう殆ど席は埋まってしまっている。

春の広げた紙の上には、種らしいものは見えなかった。そんなに小さい種だというんだろうか。

「兄貴は、また目が悪くなったのか? 」

どんなに顔を顔を近づけても、種らしいものは見えなかった。鼻息で種を飛ばしてしまったのだろうかと心配になり、息を止めてまた顔を近づけた。

「兄貴、ここだよ」

春は人差し指で種のありかを指す。未だ種は見つけられていないが、種がなくなってはいなかったことに安堵し、止めていたいた息をゆっくりと鼻から吐き出す。

「この黒い線の上か?ホントにあるか? 」「ああ」

しかし、春が指す人差し指の先を目で辿るが、どうしても見つけることができない。

「シードだ」

騙された。まんまと騙された。春の顔を見る。子ども頃と変わっていないニヤニヤした顔で僕を見ていた。

「兄貴は昔から騙されやすいんだ」

それは違う。春の言うことだから信じてしまうんだ。僕はそう思ったが口にはしなかった。

マリオカートのショートカット

IH神奈川予選のトーナメントは地区予選を勝ち進んだ各地区の代表校がA・B・C・Dのブロックに分かれてトーナメント形式で戦う。

その各ブロックのトーナメントには「シード」と呼ばれ、トーナメントに4回戦から登場するチームが各ブロックに1チームずつある。

Wikipediaによれば、

「力のある参加者同士がトーナメントの序盤で対戦しないように、参加者をトーナメント表上にばら撒くように配置することをシードと呼ぶ。シード(seed)=種まきが語源」

とある。

春はわざと「種まき」と言って僕をからかった。春の悪戯に気付かなかったのは、「春」と「種まき」という言葉のせいだろう。

種探しに夢中になっていた僕は気が付かなかったが、春が広げた紙にはあみだくじのようなトーナメントが描かれていた。

「これは反則だよ」

僕が吐いた言葉ではなく、久しぶりに春の口から聞いた言葉だった。昔よく一緒にやったマリオカートで、僕が各コースに隠されてるショートカットコースを利用してレースの大逆転劇を起こすもんだから、「これは反則だよ」と春がよくふてくされたのを懐かしく思った。だからか、僕にはこのトーナメントのシードがマリオカートのショートカットに見えた。ショートカットは列記とした走行テクニックであり、シードも列記とした勝ち残り式トーナメントのエンターテイメント性の保持だ。

「ショートカット使いは常に12位と隣り合わせなんだよ」

僕がそう言うと、紙の上のチームの数を数えだしていた春は何のことやらと数えることを止めなかったが、僕が途中で「12」という数字を口にしたからだろう、春はまたチーム数を1からブツブツと数え直していた。

12

「兄貴、まいったよ。やっぱりどう数えても12だ」

これまで俺たちが話していたことはなんだったのか・・・とはならなかった。僕は年末ジャンボ宝くじを買った後、大晦日におせちを作るために台所に立ってる妻と「3億円当たったらどうする」談義だ好きだからだ。それと似たようなものだった。

たしかにトーナメント表を見ると、「ベスト16」と呼ばれる高校は、そのトーナメントの中では3回戦目を戦う学校と考えるのが普通だ。

僕も数えた。やはり3校だ。ABCDと4つブロックがあるのだから3×4=「ベスト12」となってしまうのだ。僕はもう一度、今度は計算せずトーナメントの1つ1つを指で追いながら数え直した。大の大人2人が、単純な計算を何度もやっていることが少しおかしく思えた。

「兄貴、俺たちも車谷監督に騙されてるのか? 」

春は何やら本棚から『あひるの空』を1冊持ち出してきた。ベビーグリーン一色の45巻だった。

あひるの空 BIGTIME CHANGES(45) (講談社コミックス)

「兄貴、俺たちも車谷監督に騙されてるのかな? 」

春は首をかしげながら、45巻の序盤の一コマを見せてきた。見せられたコマでは確かに「県の16強が集まっているんだ」と車谷監督は言っていた。

車谷監督が「県の16強が集まっているんだ」と言ってる

春は自分で作ったトーナメント表を拾い上げて眺めていた。

「車谷監督は”16強”という言葉を使ってるけど、考えてみろ。第一に俺らが読んでるのはたかだか漫画だ。現実のトーナメント表を忠実に取り入れているとは限らないじゃないか」

元も子もないことを言ってしまったが、藤田和日郎先生の言葉が僕の頭の中にあった。

漫画はリアルである必要はない。漫画家は神だ。何を描こうがと自由だ。

「日向武史先生には”3回戦=16強”という意識があった。それでいいじゃないか。それなら50巻でシンプル表紙が終わるという仮説も崩れたわけではない。ベスト16のチームカラー説は、あれだけどな」そうフォローしてみたが、春は納得のいかない表情でトーナメント表をずっと眺めていた。

僕はそれよりも、そのトーナメント表にいくつもの学校の名前が入っていることが気になっていた。

「春、それよりそのトーナメント表― 」「ああ、俺が作った」

よく見るとトーナメント表には学校名はもちろん、しっかりと点数まで記載され、勝ち上がり表が出来上がっていた。

「春、やっぱり俺の勝ちだ」「いつから勝ち負けになったんだよ」

僕の頭ではまだマリオカートのレースは続いていた。僕は、春が”レース運び”を間違えていることに気づいた。

僕の調べ

『あひるの空』では、関東大会の神奈川県予選とIHの神奈川県予選の関係が説明されている箇所がある。

あひるの空(31) (講談社コミックス)

千秋が関東大会の神奈川県予選とIHの神奈川県予選の関係を説明する

しかし、九頭高が初戦敗退だったことと、他県である僕たち、またIHには万年程遠い成績を取っていた僕にとっては、あの説明では理解が届かなかった。だから、神奈川県のこのあたりの大会事情を僕は過去に調べたことがあった。

僕の調べによれば、こうだ。

僕の調べ(1):関東大会の地区代表は56校、県代表は5校

関東大会本戦への出場権は、補足の枠で「県代表は5校なので」と簡単な説明があった。だが、関東大会の地区予選と混同し分かりにくかったのは僕だけだろうか。

だから、僕はこんな表にまとめ整理していた。

関東大会本戦へは関東1都5県から下記の通りに代表数が決められており、トーナメントが行われる。

地区 代表枠
東京 8校
千葉 7校
神奈川 5校
埼玉 4校
茨木 2校
群馬 2校
栃木 2校
山梨 2校
32校

関東大会本線の県代表枠としての5校という意味で「5強」と作中は使われている。だが、「5強」を決めるためには地区予選から始まり県予選がある。九頭高が早々に負けてしまったから、本編では県予選がほとんど描かれなかったことで、この辺りの説明が雑だったように思う。

だから自分で補足しておいた。

県予選は地区予選を突破した地区の代表校で行われる。構造としてはIH予選と同じような形だが、地区代表枠の数が違う。

地区 代表枠
川崎 6校
横浜北 8校
横浜中 7校
横浜南 6校
横三 3校
湘南 6校
西相 5校
北相東 6校
北相西 5校
52校

これに、1月に行われる新人戦ベスト4の4校には県大会直接出場県が与えられており、56校で県予選のトーナメントが作られる。つまり、川崎地区からは6校が地区代表として県大会へ出場したことになる。

これが関東大会の全貌だ。

そして、描かれていた範囲だが、関東大会の川崎地区の結果をまとめた。

  • 九頭龍・・・地区予選1回戦敗退[VS玉川学園]
  • 鶴金・・・地区予選1回戦敗退[VS西条]
  • 菊川・・・地区予選1回戦敗退[VS北住]
  • 丸高・・・地区予選突破→県予選敗退[VS昭学]=県ベスト16。
  • 西条・・・地区予選突破→県予選敗退
  • 北住・・・地区予選突破→県予選突破→本戦出場

描写は少ないが、川崎地区の代表は①北住吉②新丸子③西条④新城東和⑤黒崎⑥栄麟といったところだと僕は予想した。

地区予選をすっとばして、「5強」「5強」と九頭高メンバーが言ってしまっていることが僕の混乱を生んでいた。ここまで理解すると、この辺りからも九頭高の自惚れ伏線が張られていたことが分かった。

僕の調べ(2):関東大会の結果がIH予選に与える影響

関東大会の県大会の結果は、IH地区予選へも大きく影響を与える。これは千秋の言う通り、地区予選免除のチームが現れてくるからだ。

関東大会の神奈川県大会ベスト8以上のチームに与えられる権利がある。

ベスト4、ベスト8に与えられる権利についてまとめた。

神奈川県予選ベスト4に与えられる権利
  1. 関東大会本戦出場
  2. IH神奈川県予選直接出場
  3. IH神奈川県予選シード権(いわゆるスーパーシード)
神奈川県予選ベスト8に与えられる権利
  1. 5位は関東大会本戦出場
  2. IH神奈川県予選直接出場
  3. IH神奈川県予選シード権

僕の調べ(補足):IHの神奈川県予選決勝リーグ

これは補足だが、IHの神奈川県予選はABCD各ブロックの1位の4校がリーグ戦形式で順位を争い、1位と2位の2校が神奈川県代表としてインターハイへ出場する。

ちなみに、IH出場校は47各都道府県、下記の通りに代表数が決められている。

地区 代表枠
東京 3校
北海道 2校
神奈川 2校
埼玉 2校
千葉 2校
静岡 2校
愛知 2校
福岡 2校
上記以外 1校
開催地 1校
59校

奈緒ちゃんが過去に説明をしていた以外にも複数校出場枠が与えられていることが分かった。

あひるの空(14)

奈緒と空がIH決勝リーグを見に行く電車内で県代表の説明をする

過去に調べたやつも改めて引用しておこう。

インターハイとは―

【Inter-High School Championships】
全国高等学校総合体育大会

全国高等学校体育連盟の主催で、毎年8月を中心に開催されるスポーツの総合競技大会。

「高校総体」「インハイ」とも略されることが多い。

開催地は2004年以降、地域ブロック持ち回り制に変わり、直近の開催は下記の通りです。

開催年 ブロック 主会場 愛称
2015 近畿地方 和歌山県 2015 君が創る 近畿総体
2016 中国地方 岡山県 2016 情熱疾走 中国総体
2017 南東北 山形県 はばたけ世界へ 南東北総体 2017
2018 東海地方 三重県 2018 彩る感動 東海総体
2019 南部九州 未定 未定
2020 北関東 未定 未定

これで関東大会・IHについての知識はだいぶ理解が深まった。

「こっちの種まきも忘れている」

「春、やっぱりお前の負けだ。こっちの種まきも忘れている」

僕が春のレース運びが間違っていると指摘したのは、神奈川県予選ベスト8に与えられるシード権のことである。

現実のトーナメントでは、ベスト8にも1回戦が免除となるシードが各ブロックに存在したはずだ。それが、春の作ったトーナメント表にはなかったのだ。

「深沼が持ってたのにもなかった」

別段、春を責めているわけではなかったが、春はふてくされた風にそう言うと、シードがないことを細かく説明した。

春の調べ

春は僕の調べ以上に、細かいIH県予選のデータをまとめていた。中には「そんな高校出てきたか?」というものまで載っていた。

1枚目にはIHの地区予選突破の学校がまとめられていた。

春の調べ(1)予選突破高リスト

神奈川県地を9地区で分けた図

(1)【川崎地区】
[川崎]

①西条②九頭龍③新城東和

県大会直接出場:北住吉

(2)【北相東部地区】
[相模原/座間]

①三島②**③**

県大会直接出場:とうかい大相模/相模原商業

(3)【北相西部地区】
[秦野/厚木/海老名/大和/綾瀬/伊勢/愛川町]

①綾瀬②緑野③大輪

県大会直接出場:妙院

(4)【横浜北地区】
[横浜市:青葉区/都筑区/港北区/鶴見区/緑区/神奈川区]

①里見西②**③**

(5)【横浜中地区】
[横浜市:瀬谷区/旭区/保土ヶ谷区/西区/泉区/戸塚区]

①**②**③**

(6)【横浜南地区】
[横浜市:中区/南区/港南区/栄区/磯子区/金沢区]

①**②**③**

県大会直接出場:昭光学院/横浜大栄

(7)【横三地区】
[逗子/葉山/横須賀/三浦]

①富岡商業②朋誠二③三浦

(8)【湘南地区】
[藤沢/鎌倉]

①菖蒲②鎌倉東③**

(9)【西相地区】
[山北町/松田町/開成町/大井町/中井町/大磯町/二宮町/小田原/平塚/真鶴町/湯河原町/箱根町]

①北辰②緑野

春の調べ(2)地区不明校

  • 理工(県大会直接出場)
  • 壬生(県大会直接出場)
  • 瀬ノ輪
  • 市岡

深沼のトーナメント

春はまた『あひるの空』を本棚から引っ張り出してきて僕に説明した。

これまで県大会の情報は伏せられており、トーナメントが映ることはなかった。

奈緒ちゃんがまとめた分析を眺める智久

何度智久の持っていた資料が透けて見えないものかと思っただろうか。

そして遂に、トーナメント表の一部が映るコマが登場した。それが春の言う”深沼が持ってたトーナメント表”だ。春にその場面を見せられる。

あひるの空 RAINDROP NARROW DOWN(43) (講談社コミックス)

深沼が手に取った県大会の組み合わせの一部が映る

春はここからトーナメントを作り上げていったのだと言った。

「見ろ、兄貴。妙院がココにいる」

北辰と戦い、菖蒲と戦い、九頭高は今妙院と戦っている。ココに何があるというんだ。

「春、やっぱり俺の負けだ」

そうか、そういうことか。妙院がここにいるはずがないんだ。

妙院は関東大会でベスト16まで行っているんだ。これはギャラリーの発した情報だが本編にも記載があったのは記憶に残っていた。

あひるの空 BIGTIME CHANGES(45) (講談社コミックス)

妙院は去年IH予選3回戦敗退、関大はベスト16

つまり、スーパーシード権を得ていないことから、関東大会県大会はベスト4ではなく、5位で関東大会本線へと出場したことになる。しかしながら、深沼のトーナメント表では県大会ベスト8に与えられるはずのシード権が与えられていないトーナメント表になっている。

春のトーナメント表が正しかった。

僕は犬や猫になりたい

春がこの一コマから作り上げたトーナメントは、1ブロック9校のトーナメントになっており、36校で構成されるトーナメントということになる。しかし、実際のトーナメントは32校で構成される。よく見ると滅茶苦茶なものだった。

「ほら、やっぱりトーナメントは忠実に現実のものが再現されているわけではないんだ」

僕はこの話に光が見えないことを悟り、話を片付け始めた。しかしそう言いつつも、沸々と色々な疑問が湧いてくるのを僕も感じていた。

関東大会の5強とはどこだったのだろう。大栄・昭学・北住吉・妙院・・・あとは菖蒲のはずだよな。大栄の酒巻呼人監督がそんなことを言っていたしな。

「新人戦や関大のランクは菖蒲の方が上だった」

「新人戦や関大のランクは菖蒲の方が上だった」つまり、菖蒲は妙院より関東大会のランクは上となると、ベスト4以外ない。(コメントで指摘頂いた通りこれは違うね。)菖蒲も関東大会本線に行ったってことだから、妙院か菖蒲がどちらかが県ベスト4、その特権スーパーシードでなくてはおかしい。

いや、それよりもだ。

北住吉も含めて妙院・菖蒲・北住吉のうち2校がスーパーシードじゃないと辻褄が合わねぇじゃねぇべか。あらら、、、

春にはそれを言わなかった。おろらく春も今同じことを考えているのだろう。春はトーナメント表の1点を見つめたままだった。

「どんな事柄にも意味があると思うのは人間の悪い癖だよ。原因を探そうとするんだ。犬や猫は結果にしか興味がない」

僕は『重力ピエロ』のあの言葉を思い出す。

僕は犬や猫になりたいと思った。

<完>

春のトーナメント表

僕が作ったのではない。春が作ったトーナメントだ。という逃げ道をを用意した。

見たい人はリンクからどうぞ。

新たな事実が判明次第、トーナメント表の内容も書き換えるかもしれません。春がね。

『あひるの空』神奈川県大会Aブロック
『あひるの空』神奈川県大会Bブロック
『あひるの空』神奈川県大会Cブロック
『あひるの空』神奈川県大会Dブロック

体育会出身者の為の転職エージェント【スポナビキャリア】